統合ITプラットフォーム オクトパス
最終更新日: 2023/10/20 4:50pm
オクトパスは 川越市 KOEDO E-PRO認定技術(平成29年度)です
オクトパスは自社にてまったく独自に開発・メンテナンスしているソフトウェアです。
その目的は「ホームページ」、「メール(マイクロソフト様:Microsoft365)」、「ウィルス対策ソフト(NTT東日本様:おまかせアンチウィルス)」、「ハードウェア(NW機器やWindows Server)」、「シェア」の管理(主に異常検知)をできる限り省力化することにあります。
このページでは、オクトパスのなりたち、システムの概要、中核技術、深層学習(Deep Learning)の利用、具体的な画面や稼働プラットフォームなどについて説明いたします。
オクトパスのなりたち
われわれイーレンジャーのミッションは「中小企業様のITを支援すること」です。中小企業様のIT管理にまつわるモロモロの「面倒臭いこと」を、われわれに「丸投げ」していただく。これが理想形です。
そのための絶対条件は「低コストであること」。資源の限られている中小企業様であれば間接業務に余分なコストをかけたくありません。
2009年に創業し、埼玉県川越市の皆様にかわいがっていただく中で、どんな企業様でも
1.ホームページ
2.メール
3.ウィルス対策ソフト
4.ファイルサーバ(データ共有)
を使いたいと考えていらっしゃることがわかりました。
2023/10/19 小高追記:これらは経験則ですので、時代が変遷する中で変更がありえるはずです。
また、21世紀に入ってGoogleやMicrosoft、Amazon(AWS)といったクラウドサービスが台頭し、中小企業様においても「(超大企業で利用するような)超一流のメールサービスやインフラ」をご利用いただけるようになりました。
「超一流のサービスやインフラをご利用いただき、それにまつわる管理業務・異常対応などを丸投げしていただく。そして、そのサポートサービスを可能な限り安く提供する」にはどうしたらいいか?
その結果として生まれたのがオクトパスです。
考え方としては、オクトパスのコンセプトは工場のオートメーション(自動化)と非常に近しいものです。実際のオクトパスがどんなものか手っ取り早くイメージいただくために、動画をご用意いたしました。
2023/10/18 小高注記:以下の動画は開発当初のイメージです。クラウドサービスの仕様変更、計量や見せ方の見直しなどにより画面は都度変更されています。
オクトパスの中核技術:ロボットと人工知能
上で「オクトパスのコンセプトは自動化」と書きましたが、それを支えるのが「ロボット」と「人工知能」です。
ここでいう「ロボット」は機械ではなく、ソフトウェアです。
たとえば、Google検索の中核技術である「クローラー」は、ウェブサイトを巡回してその情報を取得する「巡回ロボット」です。
オクトパスでいう「ロボット」とは、このクローラーのように人間(=管理者)を助けるために(インターネットの)「あっちこっちをうろうろして情報を持って帰ってくるソフトウェア」です。
下は、ロボットが巡回するイメージを表現しています。
オクトパスのロボットはホームページだけではなく、メールやウィルス対策ソフト、ハードウェアの周りもうろついてその状態を監視しています。
少し専門的に、IT用語を使うと
・クローラー
・Webスクレイピング
・クラウドシステム(MS365、Google、AWS)とのAPI連携
・深層学習(Deep Learning、AI)
が中核技術です。
ここまでで、「オクトパスはロボットの寄せ集め」というイメージをもっていただけたかと思います。
この「ロボット」をたくさん用意すれば、かなりの面で管理・監視の効率化や抜け漏れの防止(管理の高品質化)ができます。そうような例をいくつかご紹介したいと思います。
たとえば下の画面は、Microsoft365に設定している弊社のメアドのリストです。
オクトパスのロボットはMicrosoft365と連携(API連携)して、自動的にこの情報を持って帰ってきます。
この情報があれば、ライセンスの管理がほぼ自動的に精度よくできることがわかるかと思います。
下もオクトパスの画面です。Microsoft365に掲載された「注意が必要な不具合・事故」を表示しています(青枠の部分)。
Microsoft365の管理者権限でログインせずとも、ロボットがこれらの情報を取って来てわかりやすく表示します。
2023/10/18 小高注記:Microsoft365の仕様変更への継続した対応のため、下の画面イメージは最新ではありません。(機能としては同等のものが稼働しています)
次に、オクトパスで活用している「人工知能」について説明します。
漠然と人工知能(AI)というと、「怪しげ」、「うさんくさげ」に感じられる方がいらっしゃるかもしれません。
オクトパスでは「目視検査を人工知能で代替してしまう」ことで省力化を実現しています。
2023/10/19 小高追記:2023/10現在、AI=ChatGPT(生成AI 大規模言語モデル)が話題となっていますが、オクトパス開発当時(2016-2017年)、AIは画像認識の分野でめざましい進歩を成し遂げていました。
オクトパスで活用しているAIは、深層学習(Deep Neural Networks: DNN)のうち、具体的には「画像認識・画像識別アルゴリズム」を指します。
さて、「目視を代替する」とはどういうことなのか、NTT東日本様の「おまかせアンチウィルス」の例で説明します。
下は「おまかせアンチウィルス」の管理者用画面です。
注記:2018/9に「おまかせアンチウィルス」の管理画面のデザインが変更になっています。
ウィルス対策ソフトがパソコンへの脅威を監視していて、特にリスクがない場合には上の青枠で囲ったように「問題ありません」と表示されます。
これに対して、なんらかのリスクを検出した場合には、下のように画面上に警告がでます。
ウィルス対策の管理者がいる場合、この管理者用画面を目視して、「(どんなメッセージが表示されるか、何台と表示されるか分からないけど)赤っぽくなって×印がでる」となんらかのアクションを起こします。(どのPCに危険があるか、隔離するかどうかなど)
このような「赤くなったらダメなんだよな」のようなあいまいな表現は、AI登場するまでは「プログラムにすることができない」ものでした。
逆に、AIによって「このような曖昧な指示でもプログラミング可能になった」ことで、目視作業をコンピューターが代替できるようになりました。
画像認識は、人工知能で特に成功を納めている分野です。オクトパスの開発当初においても、AIの識別能力は人間を超える段階にありました。
「畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network。略して、CNN)」というニューラルネットワークの変形版を使うのですがここでは詳しく触れません。
さて、以上のことがオクトパスで「具体的にどうなっているか」説明します。
下はオクトパスの画面です。
画面右側に緑でOKと出ていますが、これは「AIによる画像判別によって自動的に問題なしと判断した」ことを表しています。
NGの場合は、以下のように表示が変わります。
ここで使っている深層学習のモデルは、弊社独自に開発・検証しました。
この程度の識別問題であればとてもシンプルなモデルでも大丈夫とわかりました。参考までに、上の例では5層のCNNをつかっています。
また、オクトパスのリリース当初、Symantecさんのウィルス対策ソフトを導入しているお客様がいらっしゃいました。
Symantecさんのウィルス対策ソフトの管理画面は、trendmicroさんよりも複雑なため、11層のCNNモデルを利用していました。(その後、弊社がSymantecさんのウィルスソフトの販売を止めてしまったため、Symantecさん用の機能の開発・メンテナンスは停止しています)
Zabbixとの連携
次はハードウェアの監視です。オクトパスはZabbix(ザビックス)という著名なソフトウェアと連携します。
Zabbixは機械やシステムの状態を監視して、異常が発生した際に管理者宛に警告をします。弊社ではお客様の機器(Windowsサーバー、NW機器)は原則Zabbixで管理しています。これはZabbixがこれらを管理するための(便利な)モジュールを提供してくれているからです。
下の写真は、弊社の居室にある大きなモニターに映ったZabbixの画面です。
この例では、ウェブサーバーに急激な負荷がかかっています。青枠に囲んだ部分がインシデントが発生したところです。CPUが過負荷となり(右の青枠)、フリーメモリーが極端に減少(右の青枠)しています。
こういう場合は、ほぼ「ホームページが攻撃されている状態」ですから、管理者はそれに対応する必要があります。
オクトパスはこのZabbixともAPIにより連携しています。
いくつか例を挙げて説明します。
下の例では、お客様のファイルサーバーをZabbixが監視し、Zabbixが「Dドライブの容量が残り20%を切った」というアラートを発行。それをオクトパスが取得しています。
下の画面では、弊社のファイルサーバー(Windows Server)の詳細情報を表示、たとえば、「ディスク使用量」、「アップタイム」などの情報を表示しています。
2023/10/19 小高追記:弊社のお客様のファイルサーバーは、Windows Serverからすべてシェア(Share)に代替されています。
ホームページの管理とオクトパス
先のzabbixの項でウェブサーバーの例を挙げました。
「ホームページの管理」は弊社が最も得意で実績のあるサービスです。この管理も当然オクトパスに統合されています。
以下のオクトパスの画面では、ホームページを管理する上での「主だった指標(メトリクス)」を表示しています。左から
・ウェブサーバーの死活
・ウェブサイト全体の平均レスポンス時間
・ウェブサーバーがSpamリスト(ブラックリスト)に登録されていないことのチェック
・検知されたウェブサーバーへ攻撃件数(IDSに記録された攻撃数)
です。
川越市には有名な料亭や和菓子店、観光名所などが多数あり、ありがたいことに弊社でも観光系のホームページを管理させて頂いております。
テレビでお店がとりあげられると爆発的なアクセスが発生しますし、そのお店が有名になればなるほどホームページは多くの攻撃にさらされます。
オクトパスでホームページの状態を把握することにより、「攻撃に負けないホームページ」の管理を実現しています。
Shareとオクトパス
2019/4に発売開始しましたShare(シェア)は「機能てんこ盛り」の低価格ファイルサーバーです。
2023/10/19 小高追記:弊社のお客様のファイルサーバーは、Windows Serverからすべてシェア(Share)に代替されています。
「データの保全(バックアップ、監査)」に力点をおいたサービスですので、大量の項目の監視をオクトパスが引き受けています。
当たり前のことですが、Shareには弊社開発の監視ツールがインストールされていますので、Windows Serverよりもきめ細かい監視が可能です。
ここでの監視項目は以下のようになっています。
- バックアップ処理の結果
- 各種監査ログ、システムログの取得状況
- OSパッチの滞留状況
- ハードディスク、メモリ、CPU利用状況
- サービス起動状況
- ネットワーク利用状況
Share(シェア)は徹底的に低下価格にこだわった弊社オリジナルのファイルサーバーです。
詳しくは「Shareのご紹介ページ」を是非ご覧ください。
ライセンスの管理とオクトパス
IT担当者にとってライセンスの管理は頭が痛い問題です。
メールであれば、何人分用意しているのか、支払いはいつなのか、ライセンスに余剰はないか、など。ウィルス対策ソフトについても同様の管理が必要です。
ホームページについて「常時SSL化」が当たり前になっていますので、SSLで使う証明書の期限と更新の管理、それに加えて自社ドメインの契約更新があります。
これらの契約情報もオクトパスの管理下にあります。下はその1例です。契約更新が近づいてくると、オクトパスがそれを通知します。
オクトパスのアーキテクチャ
オクトパスのアーキテクチャはとてもシンプルです。
開発言語(とバージョン、パッケージ)にのみ依存しますので、LinuxはRed Hat系、Ubuntu系のどちらでも動作します。(2023/10時点では、Ubuntu 22.04LTS、Amazon Linux2で)稼働しています。
2020/12/23追記(小高):
ずっと利用してきた国産AIエンジンChainer(Preferred Networks社)ですが、残念ながら開発の停止とPyTorch(Facebook社)への移行がアナウンスされました。
外部リンク:Preferred Networks、深層学習の研究開発基盤をPyTorchに移行(Preferred Networks社: 2019/12)
それを受けまして、オクトパスの関連部分をChainerからPyTorchへ変更し、再訓練したAI(DNN)モデルでオクトパスをアップデートしました。
2023/10/18追記(小高):
モジュールとバージョンをアップデートしました。本体モジュールとは、ロボットを巡回させるシステムやデータベースシステム(オンプレミス)をさします。閲覧用、顧客用モジュールとはそれぞれ弊社管理者が利用する監視用のオンラインシステム(AWS)、お客様で閲覧可能なオンラインシステム(お客様がご希望の場合)(AWS)をさします。
これまで、本体モジュール内に配置したMongoDBを活用するために、プログラミング言語としてNodeを使っていました。これは、MongoDB、Nodeともにjavascriptベースであるために親和性が期待できると思ったことと、Nodeの非同期処理によりMongoDBを利用することが適切を考えたからでした。しかしながら、他モジュールと連携が欠かせない状況下では、MongoDBもNodeも「同期処理」にならざるをえないことがわかりまして(バカですよね)、プログラムの可読性の検知からプログラミング言語はpythonに統一しています。
CNNモデルを学習する際にはGPUの乗ったマシンを使うのがベターです。これについては以下のブログを参照ください。
ブログ「GPUマシンでモデルの学習はどれくらいはやくなるのか」
オクトパスの顧客用モジュール
オクトパスは当初「中小企業様のIT管理の煩わしさをイーレンジャーでまとめて引き受ける」ために開発しました。そのため、オンプレミスの「本体モジュール」と弊社管理者が世界中どこからでも見られる「閲覧モジュール」のみの構成となっていました。世界中どこからでも、と書きましたが、もちろんVPNなどの技術でアクセスルートを制限しています。
一部のお客様の要望に応える形で、お客様にもITの状況を見ていただくモジュール(「顧客用モジュール」)もございます。
オクトパスの販売形態
以上でオクトパスの機能面の説明は終わりです。ロボットと人工知能、それらを束ねるシステムによって、ホームページ、メール、ウィルス対策ソフト、ハードウェア(NW機器、Windows Server)、シェアが1システムの中で一元管理されています。
オクトパスの開発中からリリース当初、販売形態として「売り切り」を入れるかどうかで大変迷いました。
先にも書きましたが、弊社のミッションは「中小企業様のITを支援すること」ですし、「一流のソフトウェアをお使いいただきながら、サポートもつけてできる限り安くするにはどうしたらいいか」という問いの一つの答えがオクトパスです。
2023/10現在、オクトパスに登録されている各種ライセンス、監視サービスは200を超えています。
これらを「人力」で管理・監視すると莫大な人件費が発生してしまいますが、担当者が朝30分程度で全ての項目について確認できています。
そして、サービス状態に以上がある場合には、弊社からサービス提供者(Microsoft365であればマイクロソフト社様)に問い合わせを行います。
オクトパスがあることで、「お客様の煩わしいIT業務を丸投げしていただく」ことが実現できていると考えています。
2023/10/18 小高 オクトパスの売り切りはしておりません。下記の理由とともに開発リソースの不足も否めないところではあります。
(2018/10/31追記)
永遠のベータ
2023/10/19 小高付記
中核技術のところでふれましたが、オクトパスはMS365、Google、AWSなどとAPI連携しています。
これらのAPIの仕様が変更されたり、Google Analytics が GA4になったりと大きく変化することがあります。(オクトパス開発当時は、MS365はまだ発展途上でした)
これらの追従してオクトパスも進化し続けています。
「これで完成」ということのない、「永遠のベータリリース」と言ってもいいだろうと実感します。